google Street Viewをめぐる議論、robot.txtの表札

google ストリートビューの日本版だが、
ブログではあまり触れる気がなかった。
単に乗り気ではなかったわけだが、いくつか理由がある。
ひとつ目は、「つまんない」から。


だって、いつも見てる風景だもん。外国版は面白いと思えたけど、日本版はあまり・・。
これを見続ける人、いるの?、そう思った。
二つ目に、「ストリート感があんまり、ない」から。
いつもの街をストリートヴューで眺めても、なんか違う。
QTVRの、あの「そうそうこんな感じだった」という感覚がない。「こんな街だっけ?」とすら思う。ニューヨークのストリートビューと手触りが一緒に感じる。
場所性がリアルに喚起されないのである。
三つ目に、「また訴訟とか起こるかなー」と感じたから。
ストリートビューに関するプライバシーの問題は外国でも問題だったしね。
さて、ここに来てこの話題に触れるのは、ストリートビューに対する違和感が興味深かったから。
ソースはスラッシュドット・ジャパンや、秋山東一さんのaki’s stocktakingで、そこからのリンク、樋口理さんのブログ Google の中の人への手紙 [日本のストリートビューが気持ち悪いと思うワケ]である。
本文を参照してほしいが、要約するとこんな感じ。
(乱暴にまとめているので、ちゃんと本文読んでね)
住宅街の生活道路は、日本ではプライベートな「なわばり」として振る舞うのが礼儀である。公道だからといってGoogleさんが公開してもらっては困る。生活道路には日本流の礼儀を通してほしい。つまり大通りとは別にしてほしい。
こんな主張だと思う。
最初は、「そうだな」と思ったんだけど、
うちの近所(和歌山じゃなくて、神戸市中央区の方)のストリートビューを見てなんかあれ、そうかな?、と思った。
Googleの撮影カーのプリウスは、生活道路には入って来てないんじゃないかな? ちゅうか、プリウスは生活道路に入って来れないでしょ!、と思ったからである。
ここでいう「生活道路」、つまり、私的なプライベート感覚あふれる路地裏って、日本の二項道路(建築基準法第42条第2項で規定されている道路で、基本的に4m以上の道幅を持つ。消防車が入れる道幅)では成立しにくいだからだ。
こういった「路地感覚」が生じる空間は、建築学では「中間領域」「セミパブリック」とよばれ、研究が進んでいる。「路地」は、不特定多数が入りにくいような空間になっていて(通過交通が入らないとか)、「ご近所で顔見知り」が成立しているものである。
googleの撮影は、そのあたりをちゃんと線引きして走っているように思えた。
でも、日本で出て来た反応は、「プライバシー領域への無礼な踏み込みは止めろ!」だった。
これは、日本人にはまだ、「路地感覚」が生きていたということだろうか?
私には、プライバシー空間として成立するような行為が、ストリートビューが撮られている道路で展開されているとは思えない。(例外はあるとしても・・)
だから、樋口理さんのブログで述べられている理由には賛同できない。
ただ、google street viewの嫌悪感は、少しわかる。
別の理由があるんじゃないか、と感じる。
それは、「自分の住んでいるところは問わないお約束」という、日本の都会の文化と折り合わないからだと思う。
都市部では、自分がどんなところに住んでいるか、なんて友だちにも同僚も教えない。
最寄り駅は教え合うけど、それ以上は教えない。「門構え」で人を判断することはしない、これが礼儀になっているのだと思う。
都市では、セルフアイデンティティと、住まいの「門構え」は切り離すことができた。
しかし、ストリートビュー使えば、どんなところに住んでいるのか、全部調べられてしまうリスクが生じる。
ブログであれば、ハンドルネームやペンネームを使えるから、現実社会でのアイデンティティとは切り離すことができる。でも、自宅のファサード(正面)は、現住所を介して実名とリンクしてしまう。
それを検索可能にされちゃぁかなわないなぁ。
そう思うのは少しわかる。
これからは、ホームにrobot.txtを張り付けて置かなくちゃいけないなー、と考えながら、そういえば電脳コイルのサッチーも管轄が違うと入れなかったな、と思い出した。
P.S.
8月13日に、トラックバックをつけたついでに、内容を少し書き直しました。

google Street Viewをめぐる議論、robot.txtの表札」への2件のフィードバック

  1. hiraさんの主張に対して特に反論というわけではないのですが、もう少し広範囲に見られた方がいいのではないかと思います。
    まだ充分に網羅されていない地域は主要道しか撮影されていない反面、先行している地域はかなり狭い道路まで撮影されています。
    一般車進入禁止の看板があるところまで入り込んでいる事例も報告されています。
    また、同じ4m道であっても、普段から通過交通の多いところと、郊外の住宅地のように、町内に用事のある車両しか入ってこないような場所では事情が異なってくると思います。

  2. コメントありがとうございます。
    ご指摘の点,たしかに,そういった撮影があったことは知っています。
    ただ,
    「人のやることだから,その程度のミスはあるでしょ。」
    というレベルだと感じました。それは人的ミスとして,Googleが対処すれば良いと思っています。
    重箱の隅をつついても仕方がないので,「ひどい例」を告発しているサイトを基準に「ストリートビュー」を評価することはできないと思います。
    私自身,東京都心部のストリートビューを見ても,そんなにヒドいとは思えませんでした。(たしかに,例外はありますけれども)
    むしろ,告発サイトがたくさん出来ていて,
    「見えちゃったもの」がたくさん投稿されていて,
    そしてこの嫌悪感はなんだろう,と感じちゃいます。
    やはり,その根源は,
    「生活空間だから覗くな」
    ではなく,
    「門構えは,誰にも知られたくない。勝手に公開するなよ」
    ではないかと,あらためて感じる次第です。
    P.S.
    某広域指定暴力団の門構えを見ていたら,目の前に違法駐車している車両のナンバープレートが読めたのには驚きました。Google,甘い!と。

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