アンチ・ジェントリフィケーション

chelsea_21th
ニューヨークで興味深かったのは、チェルシーのギャラリー街。
80年代終わりまでは、Sohoの倉庫街がニューヨークのギャラリーの中心だった。
ギャラリーを追ってブティックが出店し、粋なレストランができ、Sohoはこぎれいでヒップな街になる、その結果、家賃は高騰、コンテンポラリ・アートを展示していた前衛的なギャラリーは家賃が払えなくなる。そして、殺風景だけども家賃は安いチェルシーに逃げ出した。
そしてかれこれ15年。チェルシーには200軒ものギャラリーが集まっているらしい。
その中心地が21stと22ndストリート、だという。
で、チェルシーのギャラリー街は今、どうなっているかというと・・・・


あまりこぎれいにはなっていないのね。
ホームレスが普通に歩いているし、通りに停まっている車も業務用。スタバも花屋も無し。おまけに道路にはゴミが散乱している。
「殺風景だなぁ、ほんとにココ?」と思っていると、建物の中は立派なギャラリー。
中では知的そうなナイスガイとレディがこぎれいな受付オフィスで働いている。
注意深くファサードを見ていると、どうやら殺風景な街なみをわざわざ保っている、ということに気がつく。
よーく見ると、ブティックが既に進出していた。 
garson
「comme des garcons」。
店の真ん前を歩いていて、そこにギャルソンが出店していることに全く気がつかないほど。
comme_de_garson_facade
奥まった妙な入り口の奥の方に、小さく描かれた[COMME des GARCONS]の文字を見て「えっ?ぎゃるそん? なんでここに?」 
中に入ると、内と外の激しいギャップに、圧巻。
チェルシーのギャラリー街は、「アートでまちづくり」とか、「だれもが住みたくなるアートな街なみ」とか、そんな不動産屋や行政当局が喜ぶようなもんとは正反対。
あくまでも、ストリート側は今の殺風景なチェルシーの景観を守っている。だから、港湾で働いてるオッチャンが目の前通って全然OK。あくまで港湾労働者の街、なのだ。
SOHOでは、ギャラリーが増えることが街のジェントリフィケーション*を促進しすぎてしまい、結果的にギャラリーはSOHOから追い出された。だから、今度はギャラリーが建ち並んでもブティックが出来ても街がきれいにならないように、きちゃないチェルシーがきちゃないままでいるように配慮されている。ファサードをきちゃないまま残している。
ギャラリーでも他のブティックでも、港湾くさい街なみを意識的に保持しているのだ。だが、一歩中に入ると、最先端。
チェルシーのギャラリー化は、あくまで未利用地のリノベであり、ハックであって、決してジェントリフィケーショやっているわけじゃない、っていうことか。
おもしれぇなぁ。こういうのって、わくわくします。
(ジェントリフィケーション:街をお上品にして、不動産価値を高めること。上品な住民が増え、治安は良くなるが、貧困層を街から追い出してしまうことにつながる。)

アンチ・ジェントリフィケーション」への2件のフィードバック

  1. 内装は、相変わらず尖っている感じ。白基調でツルピタFRPの円錐型巨大什器が幾つも建っていました。室内撮影禁止で写真無しです。
    内装はビンボ、中身はしゃれてる、ってのがHIPというは正しいですね。
    もっとも、NYって古いビルばっかりだから、どこもかしこもそんなのばかり、という気もします。
    そういう意味でチェルシーの22nd(地図には22thって書いてあるものもあるなー)は、地区としてもかなりビンボだから、まだまだギャップは激しくて"HIP"でしょう。
    なんだかんだ言っていますが、ギャラリー進出によってジェントリフィケーションが起こっちゃっているのも事実。ただ、ビンボなチェルシーだからデミアン・ハーストが問題作を展示して爆発予告状が届いて・・・という状況が許されている気もします。
    あ、"フロンティア"ってことか。

  2. 内装はおしゃれでした?
    内装もビンボ臭くてコンテンツはHIPな感じっていうのが、HIPだと思うのですがどうでしょう?

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