テロをしないスカイクロラ

ヴェネチア映画祭が終わったらしい。
スカイクロラしか見てないけど,面白かったと思う。
見に行く前は,「学徒出陣」,「ゼロ戦」,「従軍慰安婦」・・というキーワードが連想された。
見たら,「企業」,「クローン」,「ループ」というキーワード。 
「ブレードランナー」系である。


予告編は,本編の重要シーン満載で,サイトにも背景が説明されている。ネタばらしにはならないと思うので,書いておく。
映画の中では,世界は平和。平和を維持するために,戦争の悲惨さを宣伝する必要がある。そのためには「なもなき若い兵の死」がもっとも効果的。それで「若いまま歳をとらない」兵隊が,「終わりのない戦争ショー」をするシステムが出来上がっている。
そんなわけで,ティーンエイジャーが日常的に空中戦をしている。
でも,能力が高くて,なかなか死なない強い兵隊は,「終わりのない戦争」から抜けようとする。
ひとつは戦わずして自殺。
もうひとつは戦争の「システム」を変えるための勝ち目のない闘い。絶対勝てないことになっている敵と戦い,勝とうとする。
そんなストーリー。
で,主人公カンナミが「何かを変える」ために「勝てない敵を倒す」と言ったとき,「こいつアホか」と思った。
「何かを変えたい」なら,市街地を空襲すればいいじゃないか,と。
本気で何かを変えたければ,ゲームのルールに従わず,ゲームそのものを壊せばいい。
戦闘機で高層建築に体当たりすれば,確実に何かが変わるはずだ。(空中給油機だってある)
「戦争ショー」からテロへ。
でも,ここの兵隊達はテロをしない。
「思いつかない」のか,
それとも
「思いつくけどやらない」のか。
それはわからない。
みんな「ボーっ」としているから,思いつかないのかも知れないし,
もしかしたら,「みんな優しい」ので,「やらない」のかも知れない。
テロを題材としたアニメばかりつくって来た押井守のことだから,そのあたりはいろいろ考えているのだろうと思う。
最後の「あなたを待っていた」というスイトの言葉は,「世界を変えよう」とする意思が込められているのだが,私にはそれが「テロリストとしてのスイト」の言葉に聞こえた気がした。
(テロという選択肢があり得ることを言っていますが,私自身がテロ翼賛ではありません。もちろん映画もテロ翼賛ではありませんよ。)

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