「文化としての住まい」11_「葬儀とその空間」

遺体が安置される住居のまわり(ファクンゴン)。男性のみが住居の周囲にたたずむ。女性は住居の中に留まっている。
060327産經新聞和歌山版_研究室最前線
現在、日本人の多くは病院で生まれ、病院で死を迎える。病院での死後、自宅ではなく斎場で葬式を行うことも少なくない。人の死は住まいから切り離され、より専門的な施設へと隔離されつつあるのかもしれない。和歌山大学システム工学部環境システム学科の平田隆行助手は「カリンガ族の村では、病人や死者が村から追い出されるのではなく、死が村を訪れる」のだという。日常生活の場で最後を迎えるカリンガ族の「死」の受け止め方を平田助手に聞いた。

続きを読む

「文化としての住まい」10_「熱い祭りと震える音楽」

パットンを踊る村人達
写真:パットンを踊る村人達。庭先に数百人が集うこともある
060320産經新聞和歌山版_研究室最前線
他人と同じ時間と場所を共有することが難しくなってきている。
生活時間も生活スタイルも違う住人が地域イベントを企画しても、楽しみというよりむしろ負担でしかないのかもしれない。
和歌山大学システム工学部環境システム学科の平田隆行助手は、「カリンガ族のような社会に戻ることは出来ないが、集団で行う祭りや芸能の質の高さは無視できない」という。カリンガ族が心血を注ぐ儀礼と、心を震わせる音楽について、平田助手に聞く。

続きを読む

「文化としての住まい」09_「若衆宿と娘宿」

akugku
4人の子供たちが宿にするアクグク
060321産經新聞_研究室最前線 
フィリピン・カリンガ族の住まいは間仕切りなしのワンルーム。プライバシーは一体どうなっているのだろうか。和歌山大学システム工学部環境システム学科の平田隆行助手は、「日本でも子供が自宅で寝るようになったのはつい最近のこと」という。子供部屋などもちろんない、ワンルームに家族が住まう方について平田助手に聞く。

続きを読む

「文化としての住まい」-08「家族概念と住まいの相続」

060307_産經新聞和歌山版「研究室最前線」
近年、日本の住まいは「継ぐもの」から「買うもの」へ変わった。カタログ性能とカラー写真のイメージによってスタイルを選び、予算によって広さが決まる。しかし自分の次に誰が住むのかは棚上げされたまま。和歌山大学システム工学部環境システム学科の平田隆行助手は、「カリンガ族には日本とは異なる住まいの相続ルールがある」という。現代の日本にも応用可能というカリンガ族の家族概念と住まいの相続について、平田助手に聞いた。
村に住まうの祖母・母・娘。女性だけが住まいを相続する

続きを読む

「文化としての住まい」-07「米倉と住まい」

060228_産經新聞和歌山版
前回見たカリンガ族の住まいは高床式の米倉を連想させるものだった。実際にカリンガ族の住まいと米倉は非常に似ているのだという。これは何を意味するのか? 和歌山大学システム工学部環境システム学科の平田隆行助手は「これは単に米倉を住宅として使うようになった名残なのではない」という。むしろ米倉に似た住まいに住むことこそがカリンガ族の文化なのだという。日本と同じ、床の上に住まうカリンガ族。その住まいのルーツである米倉について、平田助手に話を聞く。
ayyang_butbut
写真:米倉の前で刈り取ったばかりの稲穂を乾燥させる

続きを読む