宇宙と住まい

(ずいぶん前に書きかけてアップしてなかったエントリーです。機を逸してます(笑))
先日、和歌山大の教育COEであるクリエ(CREA)の講演会が学内で行われた。講演者はセルカン先生。ドイツ生まれのトルコ人で、トルコ初の宇宙飛行士候補で東大助手、イェール大やらバウハウス建築学校やらの建築を修め、「宇宙エレベーター」という著書でも知られる。(この著書の帯にはデカデカと「坂本龍一氏推薦」と書いてあるw)冬季オリンピックでスキーのトルコ代表チームで金メダルも取ったとか。トルコ・ドイツ・英語・フランス・スペイン・日本・ラテンの7カ国語を操る。
略歴を聞いても、話を聞いても、その脳力がとても魅力的。こういうのは直接そのひとを生で見るといい。ということで、ゼミを途中でストップしてゼミ生総動員で聴講する。


宇宙エレベーターの話で面白かったのは、見たこともない、やったこともない、そんなとてつもないこと、現実的に考えることが、技術力の向上にすごく役に立つ、ということ。実際に宇宙エレベーターが出来るとどんなメリットがあるのか、もいいけど、宇宙エレベーターを可能にする技術を開発すれば、日常用品にも技術移転できる、ということだ。アメリカ的フロンティア志向の考え方で、目先の応用と技術のフロンティアを同時に考えているのが興味深い。科学には基礎科学と応用科学がある、とは良く聞く話だが、技術にも基礎と応用がある、ということだろう。何の役に立つのかはわからないけれども、フロンティアを目指して突き進め、そこから、ひょっとしたら何か役に立つものが出来るかもしれない、ということ。アメリカの宇宙開発とは西部開拓の延長上にあるということはアメリカ現代史をチラ見すればわかることだが、そんなフロンティア精神が技術開発の中にもあるのだなぁ、と感じた。
さて、NASAにいたセルカン先生がなんでまた日本に来たのかは、はっきりとは言わなかった。トルコが親日国家であること(これには紀伊大島が深く関係している)もその一因だが、平和憲法を持つ国だということが大きいのかもしれない。折りにふれ「平和な日本」を強調していた。ここからは完全に想像なんだけど、セルカン先生は宇宙開発の負の部分に思うところがあったのだと感じた。宇宙技術のポジティブ面、人間の可能性、技術の可能性、想像力は存分に講演されたけど、宇宙開発のネガティブ面は触れなかった。そもそもNASAの技術移転先の多くは軍事技術のはずだ。宇宙ロケットと核ミサイルは技術的にはほとんど同じ。宇宙エレベーターは気軽に宇宙旅行に行けるとても便利な道具であるとともに、レーガン政権時代の「StarWars計画」を思い起こさせるものでもある。アメリカが世界のトップに立ち続けるためにはどこよりも先に技術を開発し、技術的優位にたち、軍事的優位に立たなくてはならない。その一翼を宇宙開発が受け持っているのであるから。一方日本の宇宙開発は(一応)平和利用。そこをとても気に入ったのだと思う。セルカン先生は、有人宇宙飛行が成功する前、事故や失敗で亡くなった73人の宇宙飛行士の名前を集めているという。名前がわからないのは、旧ソ連で事故が隠蔽されていたから。このあたりにセルカン先生の哲学を感じられた。
さてさて、セルカン先生への質問時間があったので聞いてみた。
「想像力の源となる知識ってなに?」
想像力って、いきなり思いつくのではなくて、やはり、連想だと私は思っているので聞いてみました。何がベースの知識なのか?と。
答えは「ことば」。
セルカン先生は異なる思考システムを同時に頭の中に持つことが出来ていて、それで7カ国語も話せるようになったのだという。たくさんの言葉を持っていることで、ひとつの物事をいろんな角度から考えることが出来るんだろう。
もうひとつの質問は、「セルカン先生は、一体どんな住まいに住んでいるのか?」
宇宙空間の居住スペースの研究をしていて、インフラフリー住居など、未来住宅を提案しているわけだけど、そんな人はどんな住まいに住んでいるのか? 私にとっては最も重要なところだ。
答えは、「とどろき荘(下宿のおばちゃんがいるような木造アパートだとおもう)」 六本木ヒルズのような建物ではなく、下宿のおばちゃんとすごくなかよく住んでいるそうです。
091103追記
セルカン先生は,現在経歴詐称の疑いがかけられ,東大でも調査が行われるという。アニリール・セルカン氏の経歴詐称、業績捏造の追求blog
参考まで。

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