建築設計者をそだてるデザイン教育(29日午後)

20040902-img523.jpg
パネラー:古谷誠章、安田幸二、小場瀬令二、本多友常
司会・企画:服部岑生、岡?甚幸、重村力、末包伸吾
情報価値:★★
議論の活発さ:★
総合判定:★★
■論点
1:デザイン教育のすすめ方(座学+製図にとらわれない)→各大学の取り組み紹介
2:建築士資格の国際化(UIA)からのカリキュラム編成のあり方→6年制
■事例紹介
1:国際化系(早大):6年制カリキュラムの提案。6年制による変化として卒業設計(4年時)のウェートの低下。ただし海外インターンを含む自由な4年生時代を提供する試み。設計教育としては3年間の製図、3年間の研究室独自の個別指導となっている。4年時の卒業設計ウェイトが低下するため、卒業設計優秀賞「村野賞」を廃止!
2:学際系(筑波大、和大):建築だけではなく社会学や農学など学際的な組み立てを行なっている大学の試み。「スーパー建築家」の製造をめざさない教育が共通点。フィールドを持つリアリティを重視する(和大)、建築を理解する役人・ディベロッパー育成を射程に含める(筑波)。
3:建築家系(東工大):大学の枠にとらわれない建築家育成をめざす。スター建築家(MVRDVなど)を招く、著名OBを引き込む、情報発信機関誌の発行、など。早大と逆行して卒業設計賞を新設。
■レビュー
最も会場の関心が高かったのは和大の取り組み(本多教授発表)。規模が小さいながらも実際に地域に出向いて五感を使って経験し、問題を発見し解決する姿勢、「建築家」を生み出す教育がもたらす数々の弊害(絵がきたないだけで排除される)に対して警告を発する部分が共感を呼ぶ。
筑波については「割り切り」がはっきりしていて「特殊」に感じられるが「建築家にならない残り90パーセントをどう考えるか?」という問題に一番応えている。
東工大は最近までデザインを軽視してきたスタッフ構成だったが、近年大きく変わった。正直、有名建築家の連呼に「有力伝統校」の強み、ジェラシーを感じる。また教員数の多さもうらやましい限り。東大に近い構成。ただ新しくはないかもしれない。
■感想
建築学科に来る学生は「建築をつくりたい」のではなく「建築家になりたい」と思っている。そのモチベーションをどうするのか?が大きな分かれ目か。その「建築的欲望(隈)」を煽る(東工大)か、それとも裏返す(和大)か。もちろんそんな単純な二項対立ではない。研究活動・設計活動・社会活動がリンクしたものへと移行していることは共通していた。UIA国際建築士資格への対応では、1:日本の建築教育水準が国際的に劣っているわけではないこと、2:ただし、毎年の訪問を含めた査定をうけること 3:UIAが地域独自色を消そうとしているのではないこと、が確認できた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください