ネットは星を覆い、多様な住まいはかたちを変える

20051010-butbut_view.jpg
先週の日曜の深夜、研究室の電話が鳴った。
「Hello, This is oversea’s call from Philippines, for Takayuki, HIRATA,」
「えっ? アンボイ!?」
そう、フィリピンのフィールドから、人生の先輩であり、もっとも信頼できる親友であり、ワルで優しく、頭のよい、インフォーマントのアンボイからだ。
しかも、携帯からだという。
そう、フィールドのすぐ近くの国道(といっても徒歩で2時間以上)までは電波が届くのだ。
驚愕だ。
ちょっとわかんないことをヒアリングできてしまう。
20年前迄、そこは外国人の立ち入りがほとんど出来ない紛争地帯だったし、5年前ですら日本電話をかけるためには一泊二日で50Km先の町まで行かなくてはならなかったのだ。国道ではジープが谷に落ちて、年間10人位の割合で死んでいたような所だ。
そこに、直接電話が繋がる!
すごいことだ。
さて、その電話内容はさらに驚愕だった。


butbut_proper_hamlet_maps_by_hirata_t._1997
(1998年当時の集落図。メジャーだけで実測(笑) まだまだ古い住居が残っていたんだが・・。Butbut Proper, Tinglayan, Kalinga Prov.)
まずは家族の近況、古老たちの消息、稲作の状況、首狩り紛争の状況を聞く。
アグコムの訃報を聞く。(アグコムは本当にいつも優しかった。平良とみに似ていた。)他はだいたい元気だ。ほっとする。
しかし、村はかなり変わったらしい。
20軒の住宅がソーラーパネルで電化し、ブルトーザーで強引につくった道が集落に達したらしい。
そして、「伝統住居」(30軒くらいあった)が、のこり4軒になってしまったという。絶句・・・だ。
古い民家の床板材がアンティークショップに売られていくのだ。
道路が出来て、拍車がかかった。バイヤーが来て、そのまま持っていく。
行き先は日本が多いと言うが、詳しいことはわからない。
滅多に無い八角形の住宅はもう無い。
もっとも様式が洗練され、高度に完成されていた住宅は、アンボイが必死に止めてくれたらしい。
しかし・・・なんともったいない・・・あんな立派な資産が・・・・あれほど言ったのに・・・
とにかく、私費を投じて、数少ない伝統住居を買い占めることにする。
(20年すれば、もうむちゃむちゃ貴重な観光資源だ。これで一家が食っていけるほどに・・)

ネットは星を覆い、多様な住まいはかたちを変える」への12件のフィードバック

  1. 共同購入の意見が多いね。
    こういう意識がけっこう高いって言うことは、個人to個人(P2Pだ!)のODAみたいで、いいなーと思う。面白いマネーの流通だなぁ。
    で、inaの意見にあるように、文化的技術的な持続的発展のため・・云々、だけど、その善悪判断を私たち(YEN側)が行うと、大問題。とたんに「コロニアル批判」を受けるんじゃないかなぁ。
    とはいえ、何やったって「コロニアルだ!」という批判を受ける。金使って買い付ければ、間違いなくコロニアルな状態だと思います(笑)。私たちが願う、素朴なフィリピンの村で居てほしい!ちゅうのは「コロニアル」の典型だもんなぁ。
    ただ、こちらが支配側で向こう側が非・支配側になってしまうのは、もう、円とフィリピン・ペソのレートの問題であって、円稼いでいる方に圧倒的に有利なんだよなぁ。これがある限りコロニアルにならざるを得ない気がする。

  2. hiraさんのスタンスが一番リアリティーのあるものかもしれないと感じます。
    しかし、すごいですね技術波及は!
    文化的、技術的な持続的発展のための社会実験を行うことは、村のためにも成ると思うのですが。
    その名目なら、僕も共同購入参加したいです。

  3. そういう共同購入なら乗ります。
    hiraさんもスタンスの微妙な人だなあ。地域の人たちの愛じゃなくて、hiraさんの愛なワケなのかもねえ。ということで、その愛にはコミットしやすいです。と、そういう感じです。

  4. 共同購入!そんなんも当然あり、でしょうね。立木オーナー運動みたいだ。
    村人に共同購入とネット募集の説明をし、理解してもらうのは多分至難の業だろうな・・・(笑)。「だれがどうやって相続するのだ?」とか、非常にややこしくなりそうだ・・・。権利書も契約書も何も無い社会だし・・。
    部材別に売ってもらって、名前でも彫り込むか?(笑)。
    「買い付け」の是非だけど、
    彼らの文化が何であるのか?彼らがなにを重視するのか?何を守り、何を切り捨てていくのか? それは彼らが決めることだと、私は思っています。彼らの判断を尊重します。ただ、わたしもイッチョカミしているから、口出しはするけど・・・発言力小さいですが。
    今回は、インフォーマントが、「大変だ、このままでは伝統住居が無くなってまう、hirata、買わんかね?」と言ってくれた訳です。ある意味、村人からの提案であって、私はその話にチョイと乗った(のせられた)、ともいえます。
    私がずーっと、「古いホヨイ(家)はかっこえぇ、ファンタスティック!ワンダフル!」と連発してたから、感化&洗脳されたんだろうなー。
    おっと、阪急株50%!その手があったか!

  5. 最近、頭が暴力化してるせいか、困ったときの「買い付け」は全くアリでしょ!って判断力になってます。
    その一番わかりやすい例が株の買い占めですが(阪急株、50%取得したい!>笑)、この伝統住居の場合、ネット上で仲間を募って共同購入っていう風に持っていってもいいんじゃないでしょうか?

  6. うーん、
    村人は古い建物に「愛」はないな。地域共同体も元気だし、自力建設も昔のまま。材料も大抵は地場産だし。古いもんがあろうと無かろうとアイデンティティは揺るぎないし。
    彼らにとって、古い建物はあまり必要とはされていないです。かれらにとって、村で最も重要なのは棚田。これにつきます。棚田のために、家は売り飛ばす。
    でも私にとっては古い民家にも価値があり。たぶん、観光客にとっても価値がある。ゆくゆくは持ってた方がお得だから、のこしとこう。もしかしたら、「愛」も湧くかもしれん・・・ってところでしょうか?
    彼らのために・・って思いもあまりないなぁ・・ただ、アンティークショップにだまされてんじゃないか? 安く売りすぎてんじゃないか? 売るんならもうちょっと塩漬けして、観光化したほうが儲かるゾ、私もうれしいし、っていう思惑はあります。
    コロニアルだ!という批判は重々承知の上で、それでも買い付けます。

  7. こういうのは不可逆的に進行するものと相場は決まっているのだろうけど、現地を知らない編集長もなんだか釈然としない気分になります。
    観光資源ってのは、こういうことを考える時に重要なタームなのですが、観光収入を目指して伝統的な建物を保存するというのが、伝統的建物保存のモチベーションとして、本当に正しいのかを自問しつつも、やっぱり観光なのかな、などと思ったり。
    地域のアイデンティティーであるとか、地域への愛着であるとか、根底にあるのは「愛」であるはずで、その「愛」のないところに観光もありえないのではないか、などと考えたりもしています。
    hiraさんを論難する気はまったくなくて、かなり自問的に悩んでいる重要項目の一つであったので、思わず書き込んじゃいました。
    お元気そうで何より。小学校の計画もまた話聞かせて下さい。ではでは。

  8. 誤解の無いように言っておくと、
    買い占める、というか、
    アンティークショップに売るならば、俺が買う!とい意味です。
    問題は土地なんだよなー。(土地は買えんのだよ・・)

  9. 六甲・篠原中町の茅葺き民家、昨年撤去して
    今駐車場です。政令指定都市の住宅街に茅葺き屋根があるのが、好きだったんだけどなぁ。

  10. えー
    そんなことになってんですか・・・
    ひらたさんが伝統住宅を購入?
    えー
    観光資源か・・・
    そういえば、門真にも不思議な建物がありました。メールで送りますね。造園学会の発表なんとか乗り切れました。たくさんの意見が聞けてよかったです。大阪府立大の増田教授が印象的でした。

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