産経新聞「防災減災わかやま」2014年4月 地域でつくる地区防災計画

産経新聞140423

昨年,地域防災に関わる重要な法整備が行なわれました。
これまでの防災計画は,防潮堤を築いたり建物の耐震性を高めるなどの被害抑止と,消防や自衛隊などの公的サービスによる救護が中心でした。しかし,東日本大震災のような大規模災害では,これだけでは不十分です。想定を越える津波は防潮堤では防げず,同時多発する被災現場に消防や自衛隊だけでは対応できません。近隣での助け合い(互助)が重要になってきます。そこで創設されたのが「地区防災計画制度」です。

「地区防災計画制度」は,地域コミュニティ,すなわち住民が作成する防災計画です。これまでは,国による防災基本計画や,都道府県・市町村が作成する地方防災計画がありました。行政による防災計画は,現場の声というよりも,原理原則をもとにつくられます。互助や共助の仕組みを組み入れにくく,地域の実情からかけ離れたものになる場合もありました。
一方,地域コミュニティで防災を考えると,行政では出来なかった防災が出来るようになります。例えば,津波警報が出されたときに自動車に乗って逃げましょう,と行政が言うことは出来ません。皆が車で逃げれば渋滞が起きますし,津波が迫れば,必死に走る徒歩避難者との事故は避けられません。「原則として徒歩で」という言い方が精一杯です。しかし,地域で考える場合は,道の広さや車両の台数,避難所までの距離,避難要支援者の人数から名前,性格までわかっています。例えば,5台の車に高齢者を乗せて避難所まで乗せていく,その他は徒歩で逃げる,というルールを地域で持つのであれば,車を使った避難計画をたてることが可能になります。
和歌山は水害が頻発する地域ですが,避難勧告が出ても避難所にほとんど人が集まらない地域が珍しくありません。水害によく見舞われる地域ほどこの傾向が見られます。これは防災意識が低いからなのではなく,各家が自宅近くの小高い安全な場所に倉や小屋を持っていて,そこに避難していることが理由です。このような地域では,ある世帯では自分の倉へ避難し,ある世帯では公民館へ避難する,といったより現実的な避難計画をたてた方が良いでしょう。それが地区防災計画では可能になります。

「地区防災計画制度」は,誰かが作ってくれる訳ではありません。地域コミュニティが主体となって策定しなくてはなりません。空き家の管理と同じく,地域の防災に本気で取り組むかどうかにかかっています。もちろん,地域コミュニティだけで、まだ見ぬ災害に対する防災計画を立てるのは難しいと思います。役場の防災担当や大学などの研究機関,業界団体など,防災減災の専門家の支援を受けることが重要です。専門家との間に「縁」をつくっておけば,災害が起こった時にも役に立つはずです。まずは自主防災組織や消防団,自治会が主体となって,専門家に相談することからはじめてはどうでしょうか?

 

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